中村太亮の 太亮の小話|第46回
|外人さんに強く手を握り締められて
皆さんこんにちは。中村太亮です。
ちょっと前の事なんですが、
友人数人と近所のお店で食事をしていた時のお話。
僕らから斜向かいの席で、
何だか一人寂しそうにお酒を飲んでいる外国人さん(男性)を発見。
たまたま仲間内に日常会話レベルなら英語を喋れる人間がいたんで、
思い切って声をかけてみる事に。
とりあえず僕が先陣を切り、
ボディランゲージを交えながらひたすら笑顔で
「カモン! カモーン!!」と
空いている椅子をバシバシ叩きまくり
(この時、僕は大人の飲み物の魔力でスーパー陽気)、
無理矢理その外国人さん(男性)を輪に加えました。
友人に通訳をしてもらいながら会話をしていく内に、
その外国人さん(男性)は、
とある国から一人、
エンジニアの勉強をする為に来日したのだとか。
更に突っ込み、元気の無い理由を聞いてみると……。
母国に結婚を誓った相手を残してきたんですって。
次第に話に熱を帯び、
僕の手をずっとギュッと握りながら涙ながらに訴えかけてきました。
実は最近になって突然その婚約者から、
別の相手と結婚する事になったという連絡があったのだと。
それ以外は理由も何も言わず、
一切、連絡が取れなくなってしまったらしいのです。
切ない。
遠く離れた異国の地で、そんな目に遭うなんて……。
更に僕の手を強く握り締め、彼は続けます。
「彼との事は残念だけど、今日あなたに会えて良かった。これは運命です。」と。
彼?
運命??
かれこれ、もう小一時間ほど外国人さん(男性?)に、
強く握り締め続けられる自分の手。
真っ直ぐ僕を射抜くように見つめる眼差しを見て、
背筋が凍り付きました。
どうやら僕は外国人さん(男性?)に色んな意味で、
やたらと気に入られたようです。
その日その場はどうにか凌ぎました。
でも、家がご近所さんらしいです。
大変な事になりました。
ではまた次回。